オペレーティングリースを活用した株価引下げ対策は、
リース事業への投資によって生じる初期の損失を利用して会社の利益を圧縮し、
非上場株式の相続税評価額を引き下げるという仕組みです。
特に、航空機や船舶などを対象とした「日本型オペレーティングリース(JOL・JOLCO)」が、
法人の利益繰延べ対策や事業承継対策として利用されてきました。
1.オペレーティングリースの基本的な仕組み
典型的な日本型オペレーティングリースでは、次のような仕組みが用いられます。
- 中小企業が、投資家として航空機などを保有するリース事業に出資する。
- リース事業では、航空機などを航空会社等に貸し付け、リース料を受け取る。
- 航空機などの減価償却費や借入金利息などによって、事業開始当初に会計上・税務上の損失が生じる場合がある。
- 投資家である中小企業は、契約形態に応じて、その損失を自社の損益に取り込む。
- リース期間終了時には、航空機などの売却や購入選択権の行使によって、出資金の回収を図る。
ここで重要なのは、航空機などの減価償却費が、リース事業開始当初に大きく計上される場合があることです。
そのため、リース料収入があっても、初期には損失が生じることがあります。
ただし、損失の取込み方は匿名組合契約などの法的・会計的な仕組みによって異なります。
2.自社株の評価額を下げることができる理由
非上場株式の評価方法には、大きく分けて次の2つがあります。
- 類似業種比準方式:配当金額、利益金額、純資産価額などを、類似する上場会社と比較して評価する。
- 純資産価額方式 :会社の資産・負債を相続税評価額に引き直し、所定の調整を行って評価する。
オペレーティングリースによる株価対策は、特に類似業種比準方式の「利益金額」を引き下げる効果に着目したものです。
<例:年間利益5,000万円の会社の場合>
仮に、毎年5,000万円の利益を計上している会社が、オペレーティングリースに出資したとします。
その結果、投資初年度に3,000万円の損失が生じ、税務上その全額を取り込めると仮定します。
この場合、会社の利益は5,000万円から2,000万円に減少し、利益が60%減少したことになります。
類似業種比準方式では、利益金額が評価要素の一つとなるため、他の条件が同じであれば、自社株の評価額を引き下げる方向に働きます。
ただし、実際の株価算定には所定の利益計算期間や調整があり、この表の利益減少がそのまま評価額に反映されるわけではありません。
また、株価が60%下がるという意味でもありません。
3.「純資産価額方式」で評価する場合の注意点
オペレーティングリースに出資すると、会社の現預金が減少しますが、
代わりに、出資持分等の資産が増加することになります。
したがって、この時点で会社の純資産額は変動しません。
その後、リース事業の損失が会社の会計上の利益や出資持分の帳簿価額に反映される場合はありますが、
相続税評価上の出資持分の価額が同じように減少するとは限りません。
したがって、オペレーティングリースによる株価引下げ効果は、
類似業種比準方式と純資産価額方式で異なることになります。
特に、純資産価額方式が中心となる会社では、
単に利益を圧縮するだけでは期待した効果が得られない可能性があります。
5.国税庁の非上場株評価方法の見直し案による影響は?
現在検討されている新しい非上場株式の評価方式では、従来の類似業種比準方式に代わり、
簿価純資産と残余利益を組み合わせる方式が提案されています。
この方式では、過去の利益を基礎として、
会社の正常な収益力を評価に反映させる考え方が示されています。
さらに、オペレーティングリースなどの取引については、
「一時的・非経常的な損益」として調整されることも検討されています。
仮に、リース事業による初期の損失が評価上の利益計算から除外されれば、
会計上の利益を圧縮しても、従来のような株価引下げ効果は得られにくくなります。
例えば、新方式でリース事業によって生じる損失分(3,000万円)を加算し直す調整がなされた場合、
株式評価上の利益は圧縮されないことになります。
つまり、「税務上は利益を圧縮できても、自社株の評価額を下げる効果は限定される」
という状況が生じ得るわけです。
ただし、具体的にどの取引を、どの範囲で調整するかは、今後の制度設計によります。


