
10月17日、東京商工リサーチが、
「増加をたどる『法人版事業承継税制』の活用 」と題する記事を公表しました。
本記事によると、2025年の社長の平均年齢は63.81歳と、
前年の63.59歳からさらに上昇しました。
また、2026年1~8月の「後継者難」による倒産は355件に達し、
前年同期比17.1%増となっています。
経営者の高齢化が進む一方、
後継者不足はますます深刻になっています。
こうした状況の中、
国が中小企業の事業承継を支援するために設けているのが
「事業承継税制」です。
この制度を利用すれば、
後継者が自社株式を引き継ぐ際の相続税や贈与税について、
最大100%の「納税猶予」を受けることができます。
経営者にとって非常に魅力的な制度に感じますが、
実際には注意すべき点も少なくありません。
今回は、事業承継税制のメリットとともに、
「見落としがちなリスク」と「迫りつつある特例措置の期限」
について考えてみたいと思います。
1. 相続税・贈与税100%猶予の仕組み
事業承継税制は、2009年度に創設されました。
後継者が、先代経営者などから非上場株式を贈与や相続によって取得した際、
一定の要件を満たせば、株式に係る贈与税や相続税の納税が猶予されます。
さらに、2018年度の税制改正によって、
従来の制度を大幅に拡充した「特例措置」が導入されました。
特例措置の主な特徴は次のとおりです。
① 対象となる株式に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予される
② 納税猶予の対象となる株式数の上限が撤廃された
③ 最大3人の後継者への承継が可能になった
④ 従業員の雇用維持要件が弾力化された
例えば、先代経営者が保有する自社株式を後継者に贈与した結果、
3,000万円の贈与税が発生するケースを考えてみましょう。
通常であれば、
後継者は多額の税金を納付しなければなりません。
しかし、この特例措置の適用要件を満たせば、
この3,000万円全額について納税が猶予されます。
特に、長年の利益蓄積によって
自社株式の評価額が高くなっている企業にとっては、
大きなメリットがあります。
ただし、ここで注意が必要なのは、
「納税猶予」と「免税」は同じではないということです。
2. 事業承継税制 3つの「落とし穴」
また、事業承継税制は、
一旦適用を受ければそれですべてが終わる制度ではありません。
むしろ、後継者が株式を引き継いだ後も、
さまざまな義務や制約が続きます。
特に注意したいのは、次の3つです。
1)納税の免除ではなく、あくまで「猶予」
事業承継税制は、
あくまで税金の納付を「猶予」する制度です。
一定の要件を満たせば、
後継者の死亡などを契機に猶予税額が免除される仕組みもあります。
しかし、それまでは原則として
納税猶予の適用要件を維持する必要があります。
つまり、制度を利用した時点で
納税義務から解放されるわけではないことに留意が必要です。
2)長期にわたって求められる要件維持と報告の義務
特例措置の適用後は、原則として
最初の5年間、都道府県への年次報告と税務署への継続届出が必要です。
さらに、6年目以降も3年ごとに税務署への届出が求められます。
これらの手続きを怠った場合は、
納税猶予が打ち切られる可能性があります。
つまり、本制度は、
承継後も長期間にわたって適切な管理が必要な制度なのです。
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