
事業承継を考えているオーナー経営者の方から、日々の相談の中でよくこんなお話を聞きます。
「後継者の子どもには、毎年少しずつ自社株を贈与している」
「基礎控除の範囲なら贈与も非課税なので、その範囲で子どもに株を移転しています」
「相続時精算課税制度を使って、早めに後継者へ株を渡すつもりです」
これらはすべて、税金を抑えながら自社株を後継者へ移転するための
「定番の節税対策」として広く知られている方法です。
ただ、「節税」を中心に考えて進めた自社株の贈与には、
将来、家族をバラバラにし、会社を揺るがす「お家騒動」まで招いてしまうリスクが潜んでいます。
こうしたリスクを取り上げた興味深い記事を見つけました。
事業承継に詳しい弁護士が自社株の生前贈与をめぐる法律トラブルを解説した記事です。
この記事を読んで改めて強く感じたのは、
「節税対策」と「事業承継対策」は必ずしも両立しないという事実です。
今回は、多くの経営者が陥りがちな「自社株贈与の落とし穴」を分かりやすく紐解き、後継者が安心して会社を引き継ぐための具体的な解決策について解説します。
1.「基礎控除の範囲で贈与すれば安心」は本当か?
まず、次のような中小企業でよくあるケースを考えてみましょう。
創業者の父親には、2人の子どもがいます。
一人は会社に入り、長年父親と一緒に汗を流して会社を支えてきた後継者の弟。
もう一人は、会社の経営には一切関与せず、別の仕事をしている兄です。
父親は将来の事業承継を見据え、後継者である弟に、毎年少しずつ自社株を贈与していました。
さらに弟の孫(父親から見れば孫)にも、教育費などに充ててもらおうと、毎年現預金を暦年贈与していました。
父親としては、
「今のうちから少しずつ財産を渡しておけば、将来の相続もスムーズにいくだろう」
と安心していたはずです。
ところが、父親が遺言書を残さないまま突然亡くなりました。
すると、会社経営に関与していなかった兄から、次のような主張が突きつけられたのです。
「弟は、親父から会社の株を生前贈与でたくさん受け取っている。それも含めて、公平になるよう遺産を分け直すべきだ!」
ここで問題になるのが、民法上の「特別受益」の問題です。
2.生前贈与した自社株が「特別受益」になる?
相続人の中に、生前に被相続人から特別な贈与を受けている人がいる場合、残された遺産だけを対象に遺産分割をすると、相続人間で不公平が生じることがあります。
そこで民法では、一定の生前贈与を「特別受益」として考慮し、その贈与を相続財産に持ち戻したものとみなして、各相続人の具体的な相続分を計算する仕組みがあります。
上記の例のように、自社株の生前贈与についても、後継者に対する「生計の資本としての贈与」などに該当すれば、特別受益として認定される可能性があります。
ここで注意したいのが、自社株の評価額です。
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
自社株を贈与した時点の評価額: 3,000万円
相続開始時点の評価額 :1億2,000万円
特別受益を計算する際には、原則として「相続開始時の時価」を基準に贈与財産を評価することになります。
贈与後に後継者が会社を成長させ、自社株の価値が大幅に上昇していた場合は、持ち戻した財産が膨らんだ分だけ、遺産分割の際に後継者にとって不利に働きます。
ただ、特別受益については、先代経営者が「持ち戻し免除」の意思を示すという方法もあります。
事業承継のために後継者へ自社株を贈与するのであれば、その目的とともに、持ち戻し免除の意思を書面などで明確にしておくことも検討すべきでしょう。
しかし、ここで重要な注意点があります。
特別受益の持ち戻しを免除したからといって、すべて問題が解決するわけではありません。
3.さらに怖い「遺留分侵害」に伴う紛争のリスク
持ち戻しの問題をクリアしたとしても、それだけではまだ不十分です。
民法には「遺留分」という別の制度もあるからです。・・・続きはブログで!


